P.140-145 トヨタPONAM-35

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快適なクルージングとフィッシングを楽しめるプレミアムクルーザー ボートの個性とオーナーのキャリア・指向に合わせて徹底艤装

1979年からボートライフを始め、UF-26、UF-29、そして居住性がありキャビンライフも楽しめるフィッシングボートFR-32と乗り換えてこられたオーナー。これからは、クルージングで港めぐりなども楽しみたいと次の船選びの相談を受けました。しかしながら、長年楽しんできたボトムフィッシング機能は外せないということで、スパンカーが有効な船舶であることが条件でした。

結論がすぐに出た船選び
オーナーのご要望は、一人でも操縦ができる35フィート前後の大きさで、サロンクルーザーのクオリティを持ち、なおかつボトムフィッシングができるボートである事。すぐに思いついたのがトヨタの誇る制御技術でバーチャルアンカー、バーチャルスパンカー、そしてバーチャルコンパスモードのことでした。早速オーナーと共に150号の錘と竿を持ってTOYOTA PONAM-35の試乗に行き、その性能をチェックしたところ、ボートとしての完成度の高さにオーナーはまず満足されたようでした。そして快適なサロンと居住空間を兼ね備えたサロンクルーザーとしてのクオリティとクルージングができかつフィッシングボートとしての条件も満たしていることにかなり納得されたようでした。
スペック
全  長:11.95m、全幅:3.94m、総トン数:10トン
燃料容量:850ℓ、清水容量:170ℓ
搭載エンジン:M1VD-VH
エンジン出力:272kW(370PS)2基
FB定員5名 定員12名 航行区域:沿海


バーチャル アンカー モード
コンピューター制御により、船首を風や潮流の方向へ向け、停船したい位置に船体を保持し、風や潮流が変化しても、船首方向を自動調整します。その結果、エンジンの回転数をムダに上げることなく、低推力、低燃費、低騒音で船体の位置を保ち続けます。

バーチャル スパンカー モード
船首を常に風上に向けた状態で、船体が流されます。ボタンを押すことで、流される方向や速度をコントロールできます。(実際に使ってみると、風と潮流の流れる方向が同じ時には有効ですが、風と潮流の方向が大きく異なる場合は、船首が風上に向き、仕掛けは潮流方向に流されるので、仕掛けが船の下に入り込んだり船から離れたりしてしまい、仕掛けが真っ直ぐ入りません)

バーチャル コンパス モード
風向きや潮流に関係なく、指定した方向に船首を保持し、船体が流されます。ボタンを押すことで、流される方向や速度をコントロールできます。(ボトムフィッシングに最も有効なモードです。その理由は、風と潮流の流れる方向は異なることが多く、船首を潮流の方向に向けることで仕掛けは船と平行に流れるので、後は船が流れるスピードをコントロールするだけで良いからです)

オーナーがメーカーに出した要望
メーカーの仕様は、2ヘルムステーションの場合はブラックを基調にしたスタイリッシュなサロンデザイン、FBだけの1ヘルムステーションは木目調の落ち着いたシックなデザイン。キャビンでも運転をしたいが内装の好みは木目調の方というオーナー。そこでオーナーは木目調で2ヘルムステーションにして、さらに手前船頭ができるアフトステーションも設置したいと要望を出しました。特別な仕様変更を要望してもなかなか受けてもらえない現状の中、今回は全ての要望を受け入れてもらえました。後で分かったことですが、プレミアムクルーザーを目指すトヨタにとってお客様の意見を取り入れるコンセプト艇となったようです。

オーナーが希望するサロン内にロアヘルムステーションがあるPONAM-35の仕様は、全体的にブラックを基調にしたスタイリッシュなデザインで都会的なセンスを感じさせるものでした。

オーナーは、PONAM-35SWの木目調の落ち着いたシックなデザインの方が自身のライフスタイルに合っているとお好みでしたが、ロアヘルムステーション仕様では残念ながら製造していませんでした。

この艇は、オーナーのご希望でフライブリッジヘルムステーションに加えロアヘルムステーション、更にはアフトデッキ右舷側に設けたアフトヘルムステーションの3ヶ所で操船ができる艇として誕生。ロアヘルムステーションへの設置は、ロングクルージングの際、天候が安定している時はキャビン内で操船ができるように、またアフトヘルムステーションへの設置は、トヨタが誇る「バーチャルアンカー・スパンカー・コンパスモード」を使って手前船頭でボトムフィッシングができるようにというご希望からでした。

航海計器艤装はRaymarine プレミアムGlass Bridge多機能ナビゲーションディスプレイ gSシリーズを装備
タッチパネルによる簡単操作が可能なプレミアムGlass Bridge多機能ナビゲーションディスプレイgS165(15.4インチ)とgS95(9インチ)を採用。GPSプロッタ機能にレーダー、魚探を組み合わせ、オールインワンボディでディスプレイを完成させました。そして更にオートパイロットを装備してフルナビゲーションシステムを構成してクルージング・フィッシングに最も適した航海計器艤装を目指しました。

フライブリッジヘルムステーションの標準装備です。この状態でマリーナまで回航されました。

中央にトヨタ純正マルチメーターディスプレイとエンジンスイッチが装備されています。オーナーと詳細な打ち合わせが行われ計画された艤装プランに沿って配置場所にマーキング。そしてオーナーに最終確認をしてもらいました。

運転席前にgS165(画面サイズ15.4インチ)を配置。ハンドルの前右側にリモートキーパッドRMK-9、左にオートパイロットコントロールヘッドP70Rを配置、また右側には国際VHFトランシーバーアイコムIC-M506Jを装備しました。

多機能ディスプレイ画面でGPSプロッタ(左)、レ ーダー(右上)、魚探(右下)を表示。

 
ロアヘルムステーションの右側にトヨタ純正マルチメーターディスプレイが装備されています。正面視界を遮らないように高さが抑えられ大きなディスプレイは選択できませんでした。隣にgS95(画面サイズ9インチ)、その左側にオートパイロットコントロールヘッドP70Rを配置しました。

この艇のロアヘルムステーションは運転席に座ってしまうと画面パネルに手が届きません。その為レバーリモコン後部に多機能ディスプレイ用リモートキーパッドRMK-9を装備しました。(レバーリモコン後部にはスペースがあるのでオートパイロットP70Rを配置することも可能です)

レーダースキャナは18インチ出力4KWのデジタルカラーレーダー、最大距離範囲は48nmと記載されていますが、テスト走行で25マイル先の大島を確認できたので十分な性能と言えます。

魚探はデジタルソナー1KWでトランサムマウントトランデューサーTM258を選択。トヨタ艇はアルミ製のため船体に穴を開けないという規定があるため、亜鉛板のボルトを利用して設置しました。

トヨタが誇るTVAS「バーチャルスパンカー・コンパスモード」を使って手前船頭でボトムフィッシングができるようにというご希望から設置したアフトステーション。

RaymarineナビゲーションシステムはWi-Fi機能内蔵ですのでiPad等のタブレットを活用して手元でプロッタや魚探をリモートコントロールすることができます。

オートパイロットは、シリンダー容量からEVOLUTION SYSTEM PACK ACU-200を選択。トランサム左舷舵機室に電動油圧ポンプType1を設置。

舵角指示器は右舷舵機室に設置しました。初期セットアップを行いましたが、その後微調整の必要もなく完成度高く装備することができました。

性能に影響するオートパイロットEV-1センサーはエンジンルーム前バルクヘッド、ボトムから30cm上の磁気の影響が最も少ない場所に設置。

左から2番目がオートパイロットコントロールユニットACU-200、3番目はデジタルソナーモジュールCP370、そしてネットワークの中心的存在ネットワークスイッチHS5の順に並べて設置。

5-Wayコネクターを2個使って各機器からの信号を集め、ネットワークスィッチHS5でレーダースキャナ、トランスデューサー、ディスプレイgS165、gS95をネットワークで結んでいます。

各機器がネットワーク接続されるので配線系統図を作成して工事プランを立てることが重要になります。後は実際の艇で配線の長さを計測することで工事準備は完了です。

使い勝手を向上させる艤装の実際
トヨタが提供するPONAM-35の標準装備は細部まで対策され完成度高く仕上げられています。また、オプション品においては、今までの経験を生かした推奨品まで用意されている完璧さでした。そのような中でオーナーが選んだ推奨品はエンクロージャー設備で、その他のオプション品はオーナーの個性とキャリア・指向に合うものをFMSのカタログ内艤装品の中から選んでいただきました。このコーナーでは、完成度高く仕上げられたプレミアムクルーザーに対して、オーナーと共にさらに使い勝手を向上させた艤装を紹介いたしました。

運転席前に多機能ナビゲーションディスプレイとオートパイロットコントロール、注目して欲しい部分は、左端ジョイステック上にスマートホン用ホルダー下にはドリンクホルダーを設置したところです。

多機能ナビゲーションディスプレイを選択したことにより運転台左スペースを有効利用。なんとグローブボックスST159がジャストフィット。棚板を追加して小物や書類入れとしました。

制御システムが充実している艇ですが、港への出入りや離着岸時には最も基準となるのが風向きです。バウパルピット先端にウインデックス10を取外し可能なパイプ金具で装備しました。

バウアンカーロッカーには、多目的ロープとして19mm30m1本、係船策2本、フェンダー4本を収納。係船策やフェンダーがすぐに取り出せるようにスナッパーラインホルダーを両舷に設置。

アフトデッキ右舷ハッチに、掃除道具と係船策を収納しています。やはり係船策はすぐに取り出せるようにスナッパーラインホルダーで設置しています。

5ガロンバケットが何気なくコーナーに置いていますが、直径30cmで深さ35cmありゴミ箱や清水・海水入れとして便利なアイテムです。さらにゴム製のバケットベースで安定感を増します。

アフトデッキ右舷に伸縮型テレスコボートフックをキングスターボードを利用して収納。スターボードの厚みに指先が入り取りやすくなります。

右舷にはデッキブラシ等の掃除に利用するテレ スコピックハンドルを収納。オーニング設備にも 利用するのでこの位置がベストと考えています。

費用があまり掛からず、脱着・収納が簡単で、低速での移動もでき、風雨に強いオーニング開発のご要望がありました。生地はスタモイドを利用しています。

オーニングレールを使いキャビン側を固定。後部中央にテレスコボートフックで屋根型に。次にテレスコピックハンドルで両サイドを固定して完成。

オーナーのリクエストでクッキングテーブルを制作。簡単に脱着できること、水平を出すこと、さらにガスカートリッジコンロが置けることという条件でした。

アフトデッキ中央ハッチにクッキングテーブル、オーニング、折り畳み式木製テーブル、そしてインフレータブルフェンダー4個を収納。

アフトデッキ中央ハッチにクッキングテーブル、オーニング、折り畳み式木製テーブル、そしてインフレータブルフェンダー4個を収納。

室内ギャレー部分に設置したハンガーフックは多くの種類がありカタログ商品から選びました。タオル掛けとして利用しておられます。

トヨタ推奨品オプションにあるテレビは選択しないで、市販のテレビを購入しました。ケーブル類はタオル横の貫通ホールに収納されます。

テレビを見たい時はその都度カウンターに置きます。走行中は見られないので収納します。

オーナーズルームにLEDチャートランプを設置。キャビンライトを消してしまうと真っ暗になってしまうので手明かりの代わりとしての利用です。

手前船頭でボトムフィッシングができるようにというご希望から設置したアフトステーション。ドアを左開きに取り付けてもらいました。

左開きドアにしてもらったのは良かったのですが、ドアロックに工夫が必要でした。このステーなら室内からもロックの解除ができます。

陸上管理の艇にとってエンジン洗浄は重要なメンテナンス項目。毎週のように洗浄する必要はないでしょうが、収縮式のインボードフラッシャーとホースアタッチメントを使えば簡単に洗浄出来ます。

デッキマウントの脱着式L型アウトリガーとFRPポール総全長5mとセンターリガー用FRPロッド3mですが、使わない時には船から降ろし船台に収納できるようにホルダーを設置しました。

船台下に釣具や掃除具の収納用として、FRP製 ドックボックス718(長さ2100×幅500×高 さ460mm)を設置。船と船台に余裕がないの で、蓋が開くところまで外側に張り出して設置。

フィッシング艤装(トローリング編)
PONAM-35本格的なトローリングボートとしてカジキ釣り大会でも多くの実績があるボートです。しかし、快適なクルージングを楽しむことを主目的とするオーナーにはこだわりがありました。長年フィッシングを行ってきているので設備だけはしておきたいが、クルージングに出かける時には簡単に取り外せて収納できるようにしたい。さらにカジキ釣りもできるならやりたいと言うご要望でした。

アウトリガーとセンターリガーを利用して5本のルアーを流しています。アウトリガーは4.5mと短いのですが、ルアー間は十分にありカジキ用のルアーを流しても大丈夫です。

L型アウトリガーポールを脱着するとデッキ部分にはデッキマウント金具が残ります。内部はドレンキャップを付けて配管し外側からはホルダーキャップをして水対策をしています。

このアウトリガーはアメリカンスポーツフィッシャーマンボートが多く利用しています。ハリヤードラインクリートは手前ですが、邪魔になる時はこの位置のクリートに取るのも便利です。

アフトデッキを上から見てロッドホルダー等のポジションを説明します。両舷手前から、ロッドキーパー用PL座、次にアウトリガー用ロッドホルダー、フラットライン用ロッドホルダー、船尾中央はセンター用ロッドホルダーで、左側にはボトムロッドをラックする目的でストレート型ホルダーを2本設置しています。

アウトリガーポールが4.5mと短いのですが、 高さと角度が充分取れているので手前アウトリ ガーポジションからのロッドラインはスムーズ な位置関係を取ることができています。

ロケットランチャー中央部は補強してセンターリガーをセットできるようにしています。もちろん脱着式ですので、ロケットランチャーとしてロッドリールを5本セットすることも可能です。

フィッシング艤装(ボトムフィッシング編)
オーナーが船を選ぶところからこだわっていたトヨタが誇る船の制御技術バーチャルスパンカー、そしてバーチャルコンパスモード。設置したアフトステーションで手前船頭でのボトムフィッシング。最も適した釣り場を作って実践してみました。

まさしくこの場所が手間船頭の釣り場。ボトムロッド竿エンド下に黒く見えるのがアウトリガーのハリヤードラインクリート。ラインを前方のクリートに移動しPL座セットにスーパーラーク、そして近年商品化した錘等を入れるポケットをセットしています。下には集中コンセントボックス薄型、中深場を狙う目的ですから左舷にも同じ内容で釣り場を用意しました。

デッキ上のイケスシステムの導入を検討してみました。ベイトタンクの配置場所は右舷最後尾コーナー部分。釣り上げた魚を入れるにも、海水ですが手洗い場所としても有効です。

釣り上げた魚はすぐにイケスに入れることができ、イワシやアジ、イカ等も活かすことができるので釣りの世界が広がっていくことは確実です。

180mから釣り上げた「ユメカサゴ」3匹投入。デッキウォッシュポンプなので連続運転はできませんが、数分間の運転で充分活きていました。

ベイトタンクはPF-14(直径412×高さ590mm、内容量53ℓ)。デッキウオッシュの出口から海水を注入しデッキにオーバーフローさせます。

実現できた神奈川県佐島マリーナから広島県観音マリーナ往復クルージング
5/14艤装完了。数回のシェークダウンを行い6/27佐島マリーナを出航。途中で船を置いて一旦帰宅しましたが7/13佐島マリーナに帰港出来ました。

6/27佐島マリーナ出航 → 給油で下田港に寄港 → 鳥羽マリーナ着 → 6/28那智勝浦着 → 6/29サントピアマリーナ着 → 6/30小豆島内海港着 → 7/1小豆島見学 → 7/2尾道中央ビジターバース着 → 7/3広島宮島ビジターバース着 → 7/4広島観音マリーナ着(上架洗浄陸上保管依頼をして一旦帰宅)→ 7/8広島観音マリーナ出航 → 島マリン和気ヨットハーバー着 → 7/9大三島に寄港し尾道中央ビジターバース着→ 7/10小豆島ベイリゾートホテル小豆島着 → 7/11和歌山マリーナシティヨット倶楽部着 → 7/12給油で串本港に寄港 → 那智勝浦着→ 7/13鳥羽マリーナ着 → 7/14下田港着 → 7/15佐島マリーナ帰港

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