P.86,87 スパンカーによる一本釣りとスパンカーの装備に必要な基礎知識

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アンカーによる掛かり釣り、パラシュート型アンカーによる流し釣りと紹介してきましたが、両者ともそれぞれの長短所があり、さまざまなポイントでいろいろな漁法によりボトムフィッシングを楽しもうとするならば、やはりスパンカーを利用した一本釣り(流し釣り)をマスターする必要があります。船首が風下に向かないようスパンカーで補い、潮流の方向に船を制御しながら獲物を狙う一本釣りでは、スパンカーが重要な役目を果たします。

1.スパンカーの有効性
波と潮流の影響がない場所で船首を風上に向けて停止した時、そのままの向きを維持して風下に流れる船舶は、ほとんどないはずです。多くの船舶はだんだんと船首を風下に向けていき、船舶によっては真後ろに向いてしまうものもあります。このように風の影響だけでも船首を風上に向けていられない船舶が潮流の影響を受けて流された場合、船首を風上側にもどさなければ潮流の方向に船を制御して流すことは困難になります。すなわち船首が風下に向かないように補う装備がスパンカーであり、その効力は水面下及び水面上船体の側面投影面積中心の位置に最も影響されるものであるため、船の種類やタイプによっては装備すると有効な船舶と、スパンカーのサイズや形状をいろいろと工夫しても効力が得られない船舶がありますので、どのような船舶にも有効な装備ということではありません。

船首が風下に向いていく理由

A点が船首側にある(船舶)風圧を受けると船首は風下に向いていきます。
B点が船尾側にある(船舶)船首側は水の抵抗を受けにくいことになります。よってA点が船首側にあり、B点が船尾側にある船が、停止中に船首側から風圧を受けた場合船の船首には、風下に向く力が加わり、A点とB点が離れていればいるほど、その力は増えていきます。

スパンカーが船にあたえる有効性

スパンカーを装備することにより、AをA'の方向に移動させることができ、風圧により船尾を風下に向かせやすくすることができます。このように水面上船体の面積中心を船尾側に移す方法としてスパンカーを装備するのですが、Bの位置によってその効力は大きく影響され、Bの位置が船首方向に近いほど有効で、さらに喫水が深く入り、横流れしない船ほど有効性があることになります。

スパンカーの効力がえられない船舶

B点が船尾に近い位置にあり、船首方向の面積が少ない船舶や水面下船体の面積に対して、水面上の船体の面積が異常に大きくAの位置が船首方向に近い位置に在り、喫水が浅い船舶。このような船舶は、いくら大きなスパンカーを装備しても風の圧力では船首を風上に向かせてくれません。大きな要素だけ記しましたが、このような船舶がスパンカーの効力を得られない船舶ということになります。

2.スパンカーを装備して適用する船舶の条件
スパンカーの効力がえられない船舶に対して、スパンカーを装備して適用する船舶はどのような船なのかということになります。ここでは適用する船舶を段階をもって紹介し、理想的な条件とはどのような船舶であるかを追求してみました。

波と潮流の影響がない場所で風速3〜5m/secの風を船首から受けてスパンカーを展開して停止した条件の中で
A:水面上船体の側面投影面積中心 A':スパンカーを装備して移動した中心 B:水面下船体の側面投影面積中心 ←:風の流れる方向

風に対して真横を向いて風下に流れる場合
このケースが適用する船舶として限界の範囲と考えます。船を前進させて推進力をつけてやれば船首は風上に向きやすい位置であり、この位置より船首が風下に向かないかぎり、スパンカーを装備しない船舶とくらべれば大きな差がつくことになります。
(真横より船首を風下に向かせてしまう船舶は、装備をいくら工夫しても、スパンカーが適用しない船舶ということになります)

風に対して45°まで船首を風上に向けて風下に流れる場合
このケースなら100%とはいかないが十分にスパンカーの効力を活用できる船舶でありますが、45°より風上に向くケースと向かないケースとでは、船の操船による制御が大きく異なってきますので深いポイントなどの釣りに影響していきます。このような船舶は、スパンカーのセイル面積や形状、マストの位置などを十分検討して、できるだけ風上に向くように適切な装備をすることが重要です。

風に対して船首を風上に向けて風下に流れる場合
最も良いケースです。仮に10°程船首を向かせてしまうケースでも、スパンカーを制御することでカバーできる範囲ですし、風が弱くなって30°近く船首を風下に向かせたとしても、あまり船の制御には影響しないはずです。むしろスパンカーが適用する船舶なのに、大きすぎるセイルであったり、装備の仕方で使いづらく、船のもつ機能をおとしていないかということが重要です。

スパンカーが適用する理想的な船舶の条件
●水面下船体の側面投影面積中心が船体の中央付近にあり、全体に喫水が深く入り、ボトムにセンターキールが付いていればさらに良く、バウエントリー(船首喫水部)などが深く入っている船舶。
●水面上船体の側面投影面積中心が船尾方向にあり、ハルや上部構造物(ハウス)の面積が小さく、低い船舶。

いいかえれば重心位置が低く、風に対して横流れしない風上立ちの良い船舶ということになるのですが、近年のボート事情はフィッシングボートと称していても、上部構造物の中で特にハウスの大型化や船体の軽量化にともない、この全てをクリアーする船舶は少ないですが、ボトムフィッシングを楽しもうとする船舶は、この条件が少しでも良いものを選ぶことが適切であるということになります。

3.スパンカーの装備に必要な知識
最も有効的にスパンカーを装備するためには、マストを立てる位置、下桁の高さ、セイルの形状などが、どのように決定され作り出されているかを理解することが重要です。このコーナーでは、装備する上で最も重要な要素3点と実際の取り付けでポイントになるサイドステーの位置を解説しました。

マスト位置に関して

スパンカーを取り付ける目的は、水面上船体の面積中心A点をできるかぎり船尾方向に移すことであるため、マストはできるだけ船尾近くに取り付けた方がより大きい効果が得られることになります。しかし、あまり船尾に近すぎると、展開時、収納時の作業効率が悪いばかりでなく、下桁シートの船体取り付け部との角度がきつくなるため、マストを押す力が増してマストが弓なりにベントしてセイルがフラットに張れなくなります。従ってマストは使用時の作業スペースやサイドステーなどの位置関係も考慮に入れた上で、できるだけ船尾近くに取り付けるのがベストなのです。

下桁の高さ

上部構造物(ハウス)が高く、さらにマストの位置と接近しているため、構造物によって船首からくる風がさえぎられてしまうのでスパンカーの下桁を高く上げている船をよく見かけます。しかし、下桁を高くすることによりマスト全長が長くなり、セイル面積中心も上がるため船はトップヘビーになり、横揺れが大きくなります。高い位置でセイルに風が当たるので船尾に働く力よりも、船を傾斜させる方向に力が働き、風が当たっても逃がしてしまうことになるのです。通常、キャビンとマストの位置関係は、キャビン幅2mの船で1m以上離れていれば、キャビンが高くても下桁の高さをあまり気にする必要はありません。セイルに当たる風が船を動かす効力は、水面に近いほど大きいため、セイル面積中心は下ほどよいですが、作業上の使い勝手を考え、低すぎず高すぎないということで下桁の高さを決定することが大事です。

セイルの形状

マスト位置、下桁の高さなどをいろいろと対策しても効果が得られない船の場合は、セイルの形状を変えることで効果を引き出すことができます。マスト位置が最船尾にしか位置できない場合には❶、下桁の高さを上げなければキャビンなどに風をさえぎられてしまう船には❸というように、セイルの形状を様々に変化させることで、船の配置上の問題を解決することができます。このように、最も有効的にスパンカーを装備するためには、基本となるマスト位置、下桁の高さ、さらにセイルの形状などを船の状態に合わせて作り出したスパンカーでなければ、いろいろと弊害が出てしまう装備しかできないことになってしまいます。

サイドステーの位置

サイドステー位置は、釣り場スペースや係船などに影響するため、装備する場合、船体側下桁シート位置Bよりも内側に位置することが理想で、Aのように下桁を左右にいっぱいに寄せた時に邪魔にならない位置まで寄せられれば、釣り場スペースは最大限に活用できます。このようにサイドステーの位置は、マスト位置に最も影響されるため、船の位置をよく考えて装備することが必要です。

○サイドステー位置の有効範囲
マスト位置より片舷幅が1500㎜に対して後方へ500〜1000㎜までが、通常の有効範囲でこの中にサイドステーを位置すれば、フォアステーと3本でマストをささえることが出来ます。

4.スパンカーのセイルコントロール
セイルに当たった風を素早く逃がすことにより、スパンカーは効果を発揮します。袋状になったり、しわが出るとその効果は低下します。さらにセイルをコントロールすることによって、風や潮流に対して船を制御することが出来るので、開き止めロープや下桁を左右に操ることは、スパンカーを有効に利用するポイントになります。

セイルの張り方

セイルはできるだけフラットに張って下さい。
セイルの張り方は、まず❸を緩め、❶❷を張り、❸でフラットに張れるように微調整します。風が強くなると❶をしっかりと張らないと袋状になってしまい効果は低下します。さらに❹の方向にセイルを強く引っ張り、止めていないと、しわになりやすいので注意して下さい。
※❸を張ったまま❶❷を張ってもセイルはフラットに張りきれません。

開き止めロープのコントロール
開き止めロープを緩め下桁を左右に開くことで、前方からくる風により圧力を感じますが、それだけ後ろに下がる力も大きくなります。通常12°前後が一般的ですが、船にあった角度を探すことで操船による制御が容易になります。基本的には風が弱い時には開き、船が後ろに下がりすぎてしまう時には狭めますが、その日の風の強さや潮流の方向によってコントロールする必要があります。できるだけ開かないで使うことが理想です。

下桁コントロール

風と潮流が異なる場合に、下桁を右舷又は左舷に寄せることによって、船首を風下(潮流方向)に強制的に向かせて、潮流の方向に船が流れるように操船を制御しやすくするために、左右に下桁をコントロールします。基本的には、船首が潮流の方向に向くよう下桁をコントロールして、潮流が速ければ大きく寄せていき、風が強ければ小さくしていきます。

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