テキストP.9-P.10 曳釣り漁法の実際

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曳釣り漁法は、初めてチャレンジしようとする人でもヒコーキによる流し方は比較的理解しやすいのですが、潜った瞬間素手では持てないほど強い力が掛かる潜水板や、調整が難しいバクダンなどは、基礎的な知識を知らないとうまくいかないケースが多いようです。そこで実際行われているシーンを中心に基礎的なテクニックを紹介します。

1. 潜水板曳釣り漁法の実際
潜水板は船の速度3~6ノットで表層から少し下の3~5mの中層を曳く道具で、代表的対象魚としてカツオ、メジマグロがよく知られています。使うサイズは通常、カツオ用で9~9.5寸(27~28.5cm)、メジマグロ用は、10寸~11寸(30cm~33cm)で、この板が水流を受けることで板にアクションを生じさせるため、潜水板が潜った瞬間素手では持てないほどの強い力が掛かります。そのため(初めてチャレンジする場合によく見かけるのですが)船をスローにして潜水板を投入し、徐々にスピードを上げて潜らせる方法をとるケースが多くありますが、釣り上げるたびに船を停止していたら、せっかくのチャンスを逃がしてしまいます。そこで、ここでは投入の仕方を中心にテクニックを紹介しています。

潜水板が最も効果的に潜る長さ(船体から潜水板までの距離)を決定し、船体のクリートやアイに道糸を固定します。次に足元にからむことなくスムーズに糸が出るよう整理して、潜水板を投入します。この時、板が上に向かないよう投入しますが、途中で上に向いてしまい、ヒコーキのように飛び跳ねてしまったら、少し道糸をたぐりよせ、裏返す動作を加え、潜ったら素早く手をはなすとうまくいきます。

魚が掛かると潜水板は水面に上がります。今度は素早く取り込むのですが、魚は潜ろうとし、波などで潜水板も下に向こうとします。うっかり潜られてしまうと、持ちきれない強い力が掛かり、魚も外れてしまうことが多くあります。この時のテクニックは、水面に板が付かないよう、できる限り高い位置より素早くたぐりよせることです。
※FMSが販売している潜水板は、最も効果的に潜る長さを、9寸カツオ用で6ヒロ(9m)、10寸メジ用を7ヒロ(10.5m)で調整しています。

2. ツバメ板中層曳釣り漁法の実際
ツバメ板は、ただ潜行するだけで潜水板のようなアクションを生まないため、手で持ちきれないような強い力は掛からず、比較的取り扱いしやすいタイプの中層用の道具です。船の速度は2~5ノットで、潜る深さはサイズによって異なりますが7~25m。各サイズごと糸目の調整によって深さの調整が多少できるようになっています。対象魚は、イナダ、ハマチ、スズキ、ヒラメ、サワラ等の魚に有効で、道糸を長く出し、船のスピード2~3ノットで曳くと深く潜らせることができます。FRP製アウトリガー・ポールで曳くことが有効ですが、船体に直接道糸を固定する場合には、魚が付いたことがわかり、魚の口切れを防ぐことができるハイパワーコードを利用することをお勧めします。


板を投入し、手で道糸を出しながら魚がいる水深まで潜らせます。深く潜らせるためには道糸を長く出すため、船からの距離は遠くなります。魚が付くとツバメ板は上がってきますが、魚が大きいと中層での引き合いになります。このような時は船をスローにして、落ち着いてやりとりする必要があります。魚が水面に上がったら素早く取り込む基本は同じです。

3. ビシヤマ中層曳釣り漁法の実際
ビシヤマ漁法は、船の速度2~5ノットで中層を曳く道具で、潜る水深は通常6~25m、その深さは鉛の重さとビシヤマの長さによって決定されます。FRP製アウトリガー・ポールで曳くことが有効で、ツバメ板と同じようにハイパワーコードを利用して船体から直接曳くこともできますが、魚が付いたことだけは確認できても、アウトリガー・ポールの弾力によるシャクリ動作は得られません。対象魚は、イナダ、ワラサ、ブリ系が代表的ですが、マグロ系にも有効な漁法です。よく質問のある、ビシヤマ鉛は大きい方と小さい方ではどちらがよいか? ですが、原理から言うと大きい鉛を長く付け、深く潜らせ海中でたるませることが有効ですが、プロの漁業者のようなアウトリガーでなければ強度不足になります。従ってビシヤマ鉛は、小さな鉛を数多く長く伸ばした方がシャクリ動作を確実にギジエサに与えることができ水の抵抗も少なくてすむため、扱いやすく効果的だと考えています。

ビシヤマ漁法は、ビシヤマ鉛を長く伸ばすことが有効となると、実際ビシヤマ鉛を25m、50mと付けることで、道糸、ハリスを含めて全長は50m、75mにもなり、相当な長さとなります。従って魚が掛かればデッキ上にこれだけの長さの道糸が引き上げられることになり、足の踏み場もないくらいの状況になります。

ここで注意することは、仕掛けに付いたギジエサをビシヤマを含め道糸の中にくぐらせないことが重要で、このことさえクリアーできれば20cm間隔で付くビシヤマ鉛は、風や揺れで飛ばされにくく、からみにくい特性があるためデッキ上で安定しています。後は、自身の足で踏みつけて、糸にキズが入ることさえ注意すれば長い道具も容易に取り扱うことができます。

4. バクダン曳釣り漁法の実際
バクダン漁法は、船の速度4~6ノットで、表層から少し下の3~8mの中層をバクダンと呼ぶ一種のヒコーキの後ろにビシヤマ鉛を付け、重みを出した道具で曳く漁法で、強制的にバクダンを海面に付かせ抵抗を加えた状態のものをアウトリガー・ポールの弾力で強引に引っぱりシャクリ動作を作り出します。従って、FRP製のアウトリガー・ポールが必要でさらに、ポールの強度(弾力)を基準にして適切なサイズのバクダン仕掛けを設定することが要求されます。よくバクダン仕掛けを購入し、船でいくら調整してもうまくバクダンが飛び上がらない、どうすればいいか?と相談されます。
このようなケースは、アウトリガー・ポールの強度(弾力)よりも抵抗の大きいものを選んだケースが多く、バクダンのサイズを小さくし、ビシヤマ鉛を軽くするようにアドバイスしています。初めてバクダン漁法にチャレンジする場合には、まず小さめなバクダンを選択し、ビシヤマ鉛を調整しながら、海面から1m以上飛び上がるように調整をすることが重要で、その上で、自船のアウトリガー・ポールの強度を確認するようにすれば、深くギジエサが入り、大きくシャクルことができる大きなバクダンにチャレンジできる可能性があるかを知ることができます。

アウトリガー・ポールからバクダンまでの道糸の長さは、ポールの全長や角度により多少異なりますが、アウトリガー・ポールの全長に対し、1.2~2倍が適切とされ、比較的短い距離が調整ポイントとなります。従って、バクダンの動きは非常に敏感です。少しおかしいなと感じたらゴミや小魚が付いているケースが多く、大物が掛かれば、空中高く上がったままになり、魚が掛かったことを明確に知らせてくれる特性をもっています。

次に、魚の取り込みで注意することとして、バクダンは水の抵抗が大きいため海面に付かないよう素早く船まで取り込む必要があります。その後はビシヤマ鉛とハリスが続きますので、おちついてやりとりすることですが、この引き上げたバクダンをデッキで転がしてしまうと、道糸とハリスの間に入り込んでしまい、次に出す時にからんでしまいます。引き上げたバクダンはカゴに入れるか、ホルダーなどに差しておくとうまくいきます。

5. 曳釣り漁法を助けるハイパワーコード&曳釣り用ポールライン

FMSでは、あらゆる曳釣りに対応できるよう強度と伸びが異なるサイズでハイパワーコードを4タイプ用意しています。太さ5mm、長さ1mはアウトリガー用で、1.5mは船体から直接曳く場合に使用してください。さらにアウトリガーの強度が強く、曳具の抵抗が大きいタイプ用として、太さ6mmで長さ1mと1.5mを用意しています。

曳釣りに使用するFRP製アウトリガー・ポールは、ねばりとしなやかさがある釣竿と違い、強度と弾力性に富むもので、直接魚を掛けてぶらさげてしまう曳釣りでは魚が掛かった時のショックで魚の口切れを起こしてしまう危険性があります。そのため曳釣りではアウトリガー・ポールの先端にハイパワーコードを付けることを基本としています。

ヒコーキ、潜水板、ツバメ板、ビシヤマ等の道具を船体から直接曳く場合は、ハイパワーコードを船体側に使用することは基本です。上の写真のようにハイパワーコードにロープを付け、ロープ部分を船体側のクリートやアイに縛り調整することで、ハイパワーコードは船体に触れることな100%の能力を発揮します。

曳釣り用ポールラインのアウトリガー・ポールへの接続方法は、曳釣りしか行わないタイプの方にお勧めなポール先端に直接付けるシンプルな方法と、トローリング用ハリヤードラインシステムのトローリング・クリップと入れ替えて、フタバ親子サルカンを利用して接続する方法があります。目的に応じて使いわけると便利です。

アウトリガー・ポール先端に曳釣り用ポールラインを接続したら次は船体側の調整です。アウトリガーを展開し、内舷デッキ下に鉛付きサルカン又はナスカンが余裕をもって付く所でラインを調整します。このことは魚が掛かり道糸をたぐりよせている時、風や船の揺れでラインが船外に出ることを防ぐ役割をさせています。

道糸の途中で、例えば20、30、40mに輪を作り、その輪に曳釣り用ポールラインのツナサルカンを掛け、ワンタッチでセットする方法は、ヒコーキ、ツバメ板、ビシヤマ等の曳具の距離を調整する上で役立つテクニックです。さらに対象魚やその日の海のコンディションの変化に即座に対応できる方法として多く利用されています。

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