23-24FMSテキスト編
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編トウアグンイテッィフ&グンシッィフ・トーボ )グンシッィフムトボ:(章3第48CHECK POINT船底に穴をあけないイケス設備は、船のデッキ下にウォーターバラストを積んだことと同じ状況になるため、水が入り込んだ分だけ船が重くなります。また穴をあけた場合は、イケスが船の中央部(センターライン上)から両舷にはなれるほど、水の出入りの量の差によって復原力は下がることになります。イケスのように水密性を重要とする設備は、船体構造においても十分な強度がある部分を利用して配置する必要があります。そのため通常の漁船では、バルクヘット(隔壁)間を利用して建造されることが多く、衝撃やねじれなどによって他の区画に水が侵入しないよう十分な工程と技術が必要になります。又、区画内をイケス、艙庫、空所などといくつかのスペースに分けて利用する場合は、さらに工事の完璧さを要求されます。次にイケス内に水を張った場合の船体への影響に関して説明すると、中央部(センターライン上)に単独で作られるイケス(図1)は、水の出入口用スカッパーがとてつもなく大きくないかぎり、水が喫水レベルまでイケス内に入ることで、その分KG(ベースラインの下面から船の重心までの高さ)を下げたことと同じような結果になるため、喫水が下がった分だけ船が重くなったといえます。しかし、左右に設けたイケス(図2)内に水が入り、出入口用スカッパーを通して水の出入りがある場合は、復原力に影響し、水の出入りが多い程、復原力を下げてしまうことになります。したがって、荒海を航海する小型船舶などのイケス設備は中央に配置することが望ましく、複数に設備する必要がある場合には、出入口用スカッパーのサイズをできるかぎり小さくして利用するか、あるいは全く利用しないでポンプにより水を循環させる方法を採用するほうが安全であるといえます。図1図2防熱処理までされ漁艙を兼用できるようにもなっています。したがって、ここで紹介するイケス設備は、このような超本格的な大型設備ではなく、日本の沿岸で活躍している漁船(20トン未満)に多く見られるデッキ下のイケス設備として、プレジャーボートに応用できる範囲で基本的な考え方を解説しています。図1図2重心位置にあれば水が入っても前後のバランスは変わりません。図3図4中央に1個大容量イケスを配置するより、小さく分けて配置する方が容量は小さくなりますが、船体のバランスがとりやすくなり、使い勝手も良くなります。●船体構造の利用とイケス内に水が入ることによる船体への影響●デッキ下のイケス設備の配置場所イケス設備は水を入れた時と入れない時の重量差が大きいため配置する場所によっては船体のバランスに大きく影響してしまいます。したがって船の重心位置(図1)に配置することが最も適切なのですが、多くの船舶は、この位置にエンジンやキャビンを配置する場合が多いため、重心位置に近い方のデッキ下に配置するか、前後のバランスを考えて、前後両方に配置するように設計されています。又、船底に穴をあけて水の出入口用スカッパーを取り付ける通常のイケス設備は、走行中スカッパーが水面に出てしまう船首よりの位置では、十分な機能を得られない不適切な場所といえるため、特例をのぞいては配置しないのが通常です。一般的に日本漁船(20トン未満)の多くは上部構造物(キャビン)の配置によってイケス設備の場所が決定されることが多く、後方によったキャビンの場合には表デッキ(図2)へ、中央にあるキャビンの場合には友デッキ又は、友表両方(図3)に配置せれるのが常です。さらに幅が広く復原力がある大きめな船舶は船の中央に大きく1個配置するのではなく、左右に分けたり、中央に1個、左右で2個、合計で3個配置して、バランスを考え使い分けできるよう工夫されているもの(図4)のように、他の積み荷によって前後のバランスをとり、漁の時に適切な位置にイケス設備が使用できるよう使い勝手を考えて配置しているケースなどもあります。 イケス設備の配置場所は、船体の重心位置近くにあり、センターライン上にあることが理想的ですが、さまざまな漁の種類によって、必要なイケスの容量や数は変わってきます。したがって、漁業者は、イケス部分を漁艙にしたり、他の積荷が入るような艙庫にしたりして調整し、船のバランスを失うことがないようにすることで安全に航海できる努力をしています。このようにイケス設備の配置場所は、船体に及ぼす影響が大きいため、漁の種類や構造物の配置を考え、設計段階より計画する必要がある重要な設備であるといえます。1.日本漁船(20トン未満)に見られるデッキ下のイケス設備日本の沿岸漁業でイワシを生き餌として積んでいきカツオを一本釣りで釣り上げる漁業の漁船は、イケス設備を最も重要な設備として、船舶の設計段階より配置や構造的強度なども計画され建造されています。また、このようなイケスは、大容量の生き餌が入るよう容積も大きく、最終的には生き餌が無くなった所に釣り上げた魚を積んでこられるよう

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