フィッシング・タックル編第2章:(曳釣り・トローリング)3 根付きの魚や底ものを中心に狙う下げ釣り(ボトム・フィッシング)に対し、曳釣り、トローリングの対象となる魚は、一般に回遊魚と呼ばれる魚が中心です。それらはカツオやマグロといった魚に代表されますが、ある一定の期間をかけて日本の沿岸を巡り、索餌しながら移動していくという習性を持っています。いずれの魚も遊泳力に優れた、紡錘型の身体を持っています。 これらの回遊魚は、その年によって多少の差はありますが、ほとんど毎年同じ時期に同じ場所に出現します。 春の訪れを告げる桜の花が咲く頃に、南から北上を開始するカツオのことを“上りカツオ”と呼びます。上りカツオは、黒潮と親潮がぶつかり好漁場となっている東北海域まで北上するといわれています。そして夏から秋にかけて南下を始め、往路に沿って戻り11月頃に、東海付近に出現します。このカツオを“下りカツオ”と呼んでいます。上りカツオ、下りカツオは、それぞれ毎年3〜11月頃にかけて、ボート・フィッシングの絶好のターゲットになっています。 カツオと並んで曳釣りのターゲットとなるのがクロマグロで、一般に小型のものはメジマグロと呼ばれています。カツオ同様、日本では代表的な暖流性回遊魚で、毎年5〜6月頃、若魚が九州方面より北上し、7月頃東北海域へと達します。メジマグロは、黒潮前線域で秋まで停滞して、10月頃南下を始めます。太平洋岸を含め、日本海、北海道の沿岸では、8〜3月頃、0.5〜4kg程度に成長したメジマグロを、曳釣りの対象魚として楽しむことができます。 ブリも3〜5月までの時期を中心に、太平洋岸、日本海岸で産卵し、その子供が毎年6〜11月にかけて日本各地の沿岸に出現します。 回遊魚はこのように、毎年だいたい同じ時期に定まった場所に回遊してきますので、そうした魚の習性、回遊時期を憶えておくことが、フィッシングを楽しむ上では重要です。 食物連鎖という言葉をご存知でしょうか?イワシなどの小魚がプランクトンを食べ、さらにイワシなどの小魚を大型のカツオやマグロが食べるという…アレです。魚の居る場所を掴むのに、餌となる生物の存在は、重要なファクターになります。カツオやクロマグロ(メジマグロ)などは、餌となる小魚を追いかけながら、大群で回遊しています。この群れは、日周的な周期で、刻々と変化しています。 水平線に太陽が現われ、あたりが白み始める夜明け。プランクトンや小魚は、海面近くに浮上してきます。するとそれを追って、回遊魚も浮上してくるのです。やがて日が高くなり、太陽光線が強くなるにしたがって、小魚は下層に沈下したり、物陰に隠れるような行動をとります。そして太陽が西の空に傾くと、再びプランクトンやそれを求める小魚が海面に浮上し、それを求める大型魚も浮上してきます。このような日周運動が海では毎日続けられています。 したがって、一日のうちでも各時間に合わせた(つまり魚のいる深さに合わせた)釣り方が必要になってきます。ただし、以上のようなケースも、天候や潮流、水温などが複雑に絡み合い、一概にいえるものではありません。そこで、自分なりの経験を積み重ねていくことが大切になってきます。魚のいるポイントで船を保ち、船から仕掛けを下ろして行なう方法を下げ釣り(ボトム・フィッシング)といいます。この方法で大漁を狙うならば、魚のいるポイントを正確に掴み、喰いのたつ状況、潮時を把握することに尽きます。魚のいる場所を見極められなければまず大漁は見込めません。曳釣りとトローリングでもこれは同様で、広い海をただ漫然とボートを走らせていたのでは決して魚を釣ることはできません。季節的にみた魚の居場所時間による魚の居場所の変化魚はどんなところにいるか
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