P.134-139 ヤマハUF-29F

カタログPDFはこちら

2000年秋にデビューしたUF-29I/Bは今なお根強い人気を誇るヤマハのベストセラーモデル。あれから10年、遂に最新のテクノロジーを結集し進化したUF-29Fとなって待望の再デビュー。

[インボード・スパンカーボート]ヤマハ UF-29F
デビュー 10年を迎えモデルチェンジしたUF-29Fにやはり10年で進化した艤装屋が再び徹底艤装!
新しいUF-29F、艤装屋FMSが見る大幅に向上した部分を検証(旧モデルのデータ)

・最高330馬力搭載で32ノットを実現(28.4ノット)
・ブリッジ位置変更で室内面積UP、船の重心の位置が前に移る
・後部キャビンは運転者を含め4人が前向きに座れる(1人)
・フロントウインドウがワイドになり前方視界と開放感を得る
・バウバースに寝られるスペースを確保
・スターンデッキ長さ2.20mに拡大(1.87m)
・イケス容量200ℓに拡大(90ℓ)
・マリンエアコンとバウスラスターのOP設定



モデルチェンジしたUF-29F艤装プランの実際
船を制御する性能レベルが高い船型(ハル)部分は流用しつつ上部構造をフルモデルチェンジしたニューモデル艇登場。10年前は個性豊かなオーナーに依頼されて “ボトムフィッシング、トローリング、ジギング&キャスティングからアフターフィッシングに至るまでのプランニングと艤装を行いましたが、今回は、発表のこの時期までに購入希望のオーナーと船を入手することができませんでした。そこで、多くのユーザー様からの艤装プランのリクエストもあり、ヤマハ発動機横浜店の協力を得てフレンドマリンサービスのベストフィッティングボートを誕生させ発表することになりました。今回の艤装テーマは、本格的なフィッシング艤装に加えキャビン内外の収納性、広くなったアフトコクピットの作業性と釣りプラスαの充実といたしました。

艤装屋FMSが最も注目する向上点は
スターンデッキ長さを2.20mに拡大し、ブリッジの位置変更により室内面積をアップさせたことは、船の重心が前に移動することにつながりました。その結果、釣り機能で最も重要な船の制御性能とアフトコクピットの作業性が大幅に向上しました。


フィッシング艤装ボトムフィッシング編
ボトムフィッシングにおいてこの10年で最も進化したアイテムは魚群探知機。デジタル処理導入により小型センサー(魚探振動子)でも浅場も深場も鮮明度がアップしたため、大型のセンサーをキールに埋め込む必要がなくなりました。また価格的にも安くなったので、アフトステーションにもう1台ボトムフィッシング専用魚探を設置することも艤装プランに加えやすくなりました。さらに、フィッシングサポートリモコン、小型FRP船に取り付けが簡単になったバウスラスター等も大きく進化しましたので、ますます船の制御がしやすくなっています。
ブリッジの位置が船首よりになったため、スパンカーの効果に影響する側面風圧中心は少し前に行きましたが、もっとも影響を受ける船の重心が前に移ったことでボトムフィッシングでの船の制御性能が大幅にアップしました。ここまで進化しますと本格的な1本釣り漁船とのハンデキャップは船が軽いことによる障害だけです。この障害はフィッシングサポートリモコンを活用し、前後進の回数を増やすことで補うことができますので、この船をプロの漁業者が漁船登録をして所有し、仲間の1本釣り漁船と同じ海域で操業したとしても、船団の流れについて行くことができるので邪魔にはならないと判断します。

様々な物が進化し、ボトムフィッシングでの船の制御性能が大幅にアップ! 

アフトステーションにはデジタル処理導入で進化した出力1kwで水深500mまで鮮明に見える魚群探知機(光電CVS-128)をボトムフィッシング用として装備。GPS表示を取りこんで中深場を狙います。(中深場のボトムフィッシングは緯度経度数字の増減で位置を予測し魚探で下底の起伏や魚群の反応を見て行います。)またレイマリン社オートパイロットのコントロールユニットもこの位置にも装備し、1軸船の制御で最も影響する舵角位置を見ます。オートパイロットを導入しない方でも舵角指示器を装備すると低速で船を制御するうえで大変便利です。

フィッシングサポートリモコンはこれまでの微速装置で対応できなかった超低速・微速が可能になり、シフト操作がタイマーで自動化されたのでボトムフィッシング時の船の制御が一段としやすくなりました。

フィッシングチェアーに座っての手前船頭の釣り座システムを完成させています。右側からタックルラックFMS-1W、マイボート・ロッドキーパー受太郎DX、ボックスキーパーと理想的に配置できました。

電動リール等で利用する集中コンセントボックスは、中央部の作業台に配置させることも考えたのですが、作業台の利用が多くなりコードが邪魔になる可能性が高くなることを考え、両舷のこの位置に装備しました。


アフトコクピットが広くなりましたので待望のフィッシングチェアーを両舷に設置することができました。しかし、適切な場所に設置しようとするとハッチの位置と重なってしまうため、シートベースの改造が必要になりました。

マイボートスパンカーは以前の船より1サイズ小さくするか迷ったのですが、ライトクラスにするとマスト強度が不安になるので同じサイズのミディアムをセイルカバー付きで装備しました。サイドステーが極力邪魔にならない幅でセットしています。

フィッシング艤装トローリング・ジギング&キャスティング編
トローリングにおいては、やはり日本式の曳釣りとアウトリガークリップを使ったアメリカ式トローリングが可能なフィッシャーマンタイプのアウトリガーシステム(リガー・ガンネルヘビー MKⅡ・LホルダーにFMSアルミ+FRPポールNo.0J)を採用しました。ロッドホルダーはヘビータックル80ポンドも対応できるLEE'S社ステンレス製のRH525SSを採用し、トローリング時のセンター及びトロールドラムウインチに使える位置でストレートタイプRH527SSをトランサム側に設置しています。この辺までは10年前のモデルとほぼ同様なのですが、キャンバス等追加していたキャビン後部のルーフがFRP一体型で長くなりましたので、この位置に4連のロッドラックを制作しました。また、3連タイプのロッドラックDTRP-3Wをキャビンサイド両舷に採用していますのでロッドは全部で10本をスタンバイ状態でおくことができるので多様なフィッシングに対応が可能です。そしてアフトコクピットが広くなったことで、アフトステーションの反対側左舷にギャフやネット、ボートフック、デッキブラシ、係船策等もラックできるアルミ製ポールスタンドを設置できました。その結果狭いコクピット内の整理ができフィッシング時のデッキワークがしやすくなりました。

アウトリガーは曳釣りとトローリングに対応、船が改善されたことでラック設備が充実!

フィッシャーマンタイプのアウトリガーシステムはリガー・ガンネルヘビー(ホルダーパイプ長1.2m)を採用し、オプションのパイプ固定金具でキャビン側を固定しました。また、ポールは曳釣りとトローリングの両用を可能にしたFMSアルミ+ FRPポールNo.0J全長5.8m、システム全長6.8mで設置しています。(このシステムで曳釣りを行う場合、ポールの途中から船首方向へ補強用ロープを取ることが要求されます。)

キャビンサイド両舷アウトリガー前に設置されたロッドラックDTRP-3W。この位置はバウ・スターン両サイドをプレーするキャスティングやジギングのロッドをラックするのに最適な場所です。

ルーフの最後尾にルーフ用ロッドラック4連(PERKO Fig1215を使用)をステンレスパイプで制作しました。あまり高くしてしまうとロッドを収納するのに大変なのでできる限り抑えて製作しました。

アフトステーションの反対側左舷にアルミ製ポールスタンドを設置しました。この位置に集中コンセントボックスの設置も考えましたが、スタンドタイプの収納ラックの便利さを考え決定しています。

ロッドホルダーのポジションはビックゲームにも対応できるアングル型ロッドホルダー LEE'SRH525SSを両舷に2個ずつ装備し、トランサム側にはストレート型RH527SSをセンター利用やトロールドラムウインチ用として装備しています。

ジギング&キャスティングプレーにとって最重要な船首バウスペース。バウパルピットにレイルマウントロッドホルダー RMP-1Wを両舷に装備しましたが、複数のタックルを使用する場合を考えると足りないかもしれません。

ボート運行のための一般艤装
室内ヘルムコンソールはスペースに余裕がないのですが、大きく改造しない方向で考えてみました。まずは2009年10月規制緩和で導入が許可された国際VHF無線機(IC-M504J)の設置場所を決定し、無線機内のヘイラー(拡声)及び自動汽笛機能を活かすためにレーダードーム前に外部スピーカーを装備。続いて走航しながら水深200m前後の大陸棚が見える条件で選んだデジタル処理導入で進化した本多電子10.4型プロッタ魚探(HE-7301-Di魚探出力1Kw、50/200khz、インナーハル仕様、オプションでスルハル水温センサー)と温暖化傾向で日本沿岸での霧の発生が多くなった現状を考え光電8.4インチ液晶レーダー(MDC-941 4Kw、レドーム)。そして舵角指示器を搭載したレイマリン社スマートパイロットシステムを装備。ここまで来るとコンソールはスペース的に限界のようです。
以前のUF-29I/Bで行った運航面での改造や艤装は標準装備されていました。特に船尾ムアーリングホール、ダブルクリートの採用、さらには舷縁内側グラブレールの設置は理想的な設備になっています。また、バッテリーのチャージシステムもエアコンやバウスラスターを搭載しても十分なシステムを作り上げてくれました。ただ各々のバッテリー状態やAC100Vの電圧を管理するモニターは必要ではないかと思います。

FMSが10年前の船で行った運航面での改造や艤装は標準装備されました

プロッタ魚探で200m前後の大陸棚を確認しながら走航し、ポイントに着いたらアフトステーションの専用魚探でボトムフィッシング。レーダーはオプションでヘディングセンサーを購入すればリーズナブルな費用で多船航跡表示をさせることもできます。

ムアーリングクリートが設置され、ダブルクリートが採用されました。さらに舷縁内側のグラブレールは多目的に使えますので理想的。以前のUF-29I/Bではこの部分の改良をするためにトップにチーク材を張り詰めて改造しています。


国際VHFアンテナは高い位置に長いアンテナが最も効果が得られることは証明されているためMarinerシリーズのVHFアンテナ8500 8フィートを選択し、ヘイラー(拡声)及び自動汽笛用の外部スピーカー 220SWをレーダードーム前に装備しました。

搭載されるバッテリーの管理は重要だと思います。電子レンジや電動リールを使うと気になるのがバッテリー残量。切り替えが必要ですが4バンクバッテリーモニターやAC100Vの電圧モニターは必要だと思います。

バウスラスターはLEWMAR社最小モデルの140TT2.2kwがオプション設定されていますが、ボトムフィッシングに活用したいと考える方には、使用頻度が大きく上がりますので1サイズ上の185TT3.0kwをお勧めします。

少し不安を感じたのでこの部分にハンドレールを制作して追加しました。急いで船首に向かう時やアウトリガー操作時にあると便利だと思います。またフィッシャーマンタイプのアウトリガーを採用すると船体側金具が邪魔になりこの位置になりますが、サポートアーム付きの一般的なアウトリガーを採用する場合やアウトリガーを装備しない場合は、できる限り船首よりに付けることがベストです。

キャビン内外の収納とホルダー
収納はこのクラスのボートにとって最も重要なポイント。キャビン内では2ヶ所、また外部では収納が最も利用しやすいキャビンウイング内側を利用して提案してみました。キャビン内収納の1 ヶ所目はトイレ反対側にAC100Vのコンセントがあり「家電商品を置いてください」と設置されているユーティリティスペース。この部分を大改良、商品化されている3段型引き出しユニットを埋め込むスペースは十分にあるし、家電商品を置かなければ高さがあるのでロッド収納スペースとして最適な場所であると考えました。そして2 ヶ所目としてキャビン入口の右側に電子レンジやポットが置け、上段は小物棚、そして2、3段目は引き出しタイプの収納ユニットをキングスターボードで制作してみました。
外部はキャビンウイング右舷内側に小物の収納を考えグローブボックスNo.4476とドリンクや携帯電話そしてハンデイタイプのVHF無線等を収納するPVC製でソフトタイプのホルダーを設置、その反対側にストレージボックスNo.4531(ごみ箱)とベクソンPVCホルダーを配置してみました。
如何でしょうか! まだまだ船には収納で利用できるスペースが多くあります。船にあるとなにかと便利なグッズの利用方法や装備位置を工夫して使い勝手を向上させてください。

家電製品等をこの位置で使うなら3段型フラッシュマウント引き出しユニットを壁面中央部に埋め込むことがベストで、引き出しユニットも家電商品も置かないなら、思い切って大きな穴をあけてゴルフクラブの収納バケット等を利用してスタンドタイプのロッド収納スペースとして利用することでも良いと思います。

チーク材に代わる新たな材料として利用が増えているキングスターボード(水に強く腐食したり変色したりしない材料)で収納ユニットを製作しこの位置にセットしました。キャビン内に入らなくても電子レンジが利用でき、釣り道具を取りだすことができますので大変便利です。

クーラーボックスの適切な設置場所は作業台の利用に邪魔にならず座ることも考え船尾中央部にいたしました。今回採用したイエティクーラーボックス65クォートは保冷力抜群で上に乗って飛び跳ねても変形することが無い耐久力を誇ります。また、15及び25クォートの携帯用サイズもありますので食材等の保存に便利です。

  
アフトステーション側にはフランジサイズが362×210×深さ114mmのグローブボックスNo.4778を埋め込み、その上にソフトタイプのPVCホルダーを装備しました。まだまだ利用を考えたいところですが操舵の油圧ユニットやエンジンルームへの吸入口があるのでここまでが限界のようです。

 
左舷側はスペースが大きくあるので思い切ってフランジサイズ328×470×深さ170mmのストレージボックスNo.4531を埋め込んでみました。このボックスは内部密閉型ですので、ごみ箱としても利用できる優れものです。

アフトコクピットの作業性の向上と快適に過ごすための艤装
10年前大好評だった多目的に使えるベイトタンクFR-32を利用した作業台を今回もアフトコクピットの作業性を考え装備いたしました。前回と異なる点はイケス容量が大きくなったため清水用フレキシブル・ウオータータンクを100ℓから150ℓにすることができたこと、温暖化傾向が強まった昨年のような猛暑を想定し、作業台を利用してパラソルを設置し、そのパラソルに清水ミストシステムを導入したことです。さらにキャビン内に工場オプションでマリンエアコンを設置すればボートライフの快適さは格段に向上します。次に夜間の照明は近年性能をアップさせた8個のLED照明器具でまとめ上げてみました。そのLEDの消費電力は8個全て点けても5Amp以下の省電力で、ハロゲンデッキライト12V55W1個より消費電力は少なくてすむのでバッテリーの消費を抑えることに成功しています。また、オプション設定されているエアコンやバウスラスター等による多くのバッテリー搭載に関し、各々のバッテリーの自然放電を抑える目的と、お腹を減らしたバッテリーの一週間での充電を考え、最大出力15Wのソーラーチャージャー 2個と5Wタイプ4個をルーフスペース一杯に埋め尽くしてみました。ここまで搭載して商品代金は定価ベースで¥10万円以下ですので、この投資で5年間快適に過ごせると考えた場合コスト的にも十分に経済的であると思います。

多目的作業台。デッキ下のイケススペースを清水タンクとポンプ等の設置場所として利用し、そのハッチを利用してデッキ上のイケスを装備しテーブル利用にまで使うこのシステム。何といっても清水150ℓをこの位置で使えることが最大の利点と考えます。

穏やかな海面で20ノット以下ですが走航可能なパラソルに清水ミストシステムを導入してみました。DC12Vのハイフローブースターポンプで6個のノズルからミストを放出しますが何と1時間最大で約24ℓしか清水を消費しないで周辺の温度を2〜3°下げることができます。

船にはメインとアクセサリーバッテリーがあり、オプションのバウスラスターとエアコンを搭載すると4台がプラスされ合計でバッテリーは6台となります。したがって各々のバッテリーにソーラーチャージャーを装備することはバッテリーを保護するためにも理想的なことです。

  
ルーフトップのロッドラックには作業台周辺を照らすためにLEDデッキライト3521を2個。後部両舷に通路を照らすためにLEDシーホークデッキライト0670を装備。ルーフ内側には天井灯として目に優しいレッドランプも切り替えスイッチで使い分けることができるチューブライトを2本設置。同じものをブルワークの内側にフッドライトとしても装備しました。夜のムードを最高に盛り上げる演出を8個全てで5Amp以下の省電力で実現しています。

私は、この位置にハロゲンデッキライトを付けると、点灯した瞬間強い光が目に入り危険を伴うので考慮して欲しいと常々訴えているのですが、残念ながら10年前と変わっていませんでした。設計のコンピュータールームに入り込みデータを消すしかないのでしょうか?

 
喫水からの高さがあるブルワークトップ、万一落水したら上がることができません。そこで夏の海水浴時での利用も考えダイバーラダー 19803 3段を採用しました。収納場所も確保しやすくワンタッチで脱着でき、安定感抜群で強度もあるので安心なアイテムです。

実釣りと釣りプラスαの楽しさ

アフトデッキの長さが33cm拡大したことで実現したフィッシングシートに座っての手前船頭による流し釣りのシーンです。猛暑に備えて装備した走航型のパラソルと清水ミストシステムは10年前には考えも及びませんでした。室内のエアコンも同様でヤマハでは2年前からこのクラスの新艇にOP設定していますが、導入された方の満足度はとても高いようです。

船外の照明8個全てをLED器具で装備していますが、夕暮れ時から全てを点灯しても1時間に約5Ampの省電力ですから4時間点けても消費は20Ampで済みます。したがって今までのようにエンジンを掛けっぱなしにしてバッテリーを充電する必要はなくなりましたので、船のいたる所に照明をたくさん点けて気軽にアフターフィッシングを楽しむことができるようになりました。

ベストフィッティングボートの完成

日本式のフィッシングボートのレベルは、船を制御する性能と快適さにおいて世界で最も優れたところまで来たと言っても過言ではないと思います。そのレベルの船にフィッシング機能を充実させる艤装をし、さらにより快適にボートライフを楽しむことができるプランを予定通りに完成させることができました。キャビン内外にゲストが楽しめる設備を多く用意しましたので、ご家族の方にも十分ボートライフを楽しんでもらえると私は確信します。

一覧へ戻る