P.90,91 スパンカー装備に対する近年の問題点

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1996年発行の弊社マリンカタログ別冊充実版内で、初めてスパンカーの装備の仕方や操り方を解説しました。当時この解説は多くの人に理解され、以降カタログ(前のぺージ)には解説を掲載し続けてきました。しかし、近年のレジャー船(レジャー漁船)の性能や配置が以前と異なってきましたので、補足したいことや問題点が多く出てきています。そこで、当コーナーでは近年の問題点に注目し、船に合った適切なスパンカーを効率よく装備するためにはどのようなことに注意するべきかを解説しその対策を紹介いたします。

近年の問題点
・オーバースパンカー(セイル面積が大きすぎる)

・船の制御の仕方
・操り方の理解不足(誤解)
・船に合った適切な装備の仕方
・最船尾にマストを位置させる傾向

レジャー船の多くの方はスパンカーを付ければ、大型遊漁船と同じように船を操ることが出来ると考えています。しかし、レジャー船は遊漁船と比べると船体が軽く水面下の喫水が浅いため風に流されやすいので、遊漁船と同じ動きをするためにはエンジンで制御する必要があります。ましてセイル面積が大きい船は抵抗がさらに増しますので常にエンジン制御が必要になってきます。ここで重要なことは、潮流と風の向きが同じならエンジンの前後進で制御できるのですが、異なる場合は困難だということです。結論から先に話しますと、船首が風に流されにくい船(スパンカーボート)で抵抗の少ないセイルほど、潮流についていく船の制御はしやすいということになります。したがって小小さなセイルで効率が最も良い装備の仕方をすることが重要な要素と考えます。

ヤマハFR32。レジャー船ですが大型遊漁船団の端で同じ向きで流すことができています。しかし、船体が軽く水面下の噴水が浅いのでエンジンで制御しないと風には速く流されてしまいます。

大型遊漁船と比較するとレジャー船のセイル面積はかなり大きなサイズになっています。その理由は船体が軽く水面下の喫水が浅いので風上に向かないからです。

風速7~8m、遊漁船と同じ向きで風上に向いています。この風ならもう少しセイルは小さくてもOKですが風が弱い時を考えると適切なサイズと考えます。(ミディアムⅡ)

近年の問題点:オーバースパンカー(セイル面積が大きすぎる)
全国各地の地域造船で生産される遊漁船や漁船に比べ、大手造船メーカーが作る量産型のレジャー船は軽排水量で喫水が浅い船が多くなっています。それらの船の走行性能は著しく進歩しているのですが、微速走行時や停止時には風に影響されやすいという弱点があります。漁船は一定の場所に比較的長く止まることができますが、レジャー船があっという間に流れてしまうことから理解していただけるかと思います。近年、風に影響されやすいレジャー船に面積の大きなスパンカーを装備している船を見かけます。その理由を聞いてみると穏やかな風の中で釣りをすることが多いので風上にしっかり向いてほしいからとのことでした。しかし、風が強くなればオーバースパンカーの船は風に流されやすくなり、さらに横風を受けると大変危険です。スパンカーによる船の操り方の基本は、穏やかな風の場合でも船首を風上に向かせることばかりでなく、船を潮流の方向に流すために船首を潮流の方向に向かせることもまた重要なことです。風が強くなり船が風に流されてしまったら船を潮流の方向に流せなくなります。したがって抵抗が大きいオーバースパンカーはリスクも大きいため不適切だということになります。

近年の問題点:船の制御の仕方・操り方の理解不足(誤解)
全国各地でスパンカーを使って船を制御する方法で漁業が行われています。船の形や漁法も異なり帆(セイル)の形状も様々です。集団で行われる漁業では同じ流れ方をする必要があるので、その地域にあった帆の形状が生まれているのだと考えます。しかし、どの地域の方に聞いてみてもスパンカーを使った船の操り方を解説した資料は私の調査した限り見かけません。ましてマリン業界で指導する業者はスパンカーを風見鶏として考え船首を風上に向けることで満足しているのが現状です。したがってここでは模型を使って基本的なスパンカーによる船の操り方を解説してみました。

風と潮流の方向が同じなら、仕掛けは船と並行に流れますので潮流に合わせてエンジンを前後進することで船を制御すれば仕掛けについていけます。スパンカーを風見鶏として考えてもOKですがセイル面積が大きすぎると船の流れるスピードは速くなり過ぎます。

風と潮流の方向が異なる場合、船首を風上に向けたままですと仕掛けは船と並行に流れず、船下に入ってしまい仕掛けについていけなくなります。潮流が速ければ仕掛けはアッと言う間に斜めになりますのでポイントに到達する前に釣りにならなくなってしまいます。

風と潮流の方向が異なる場合、スパンカーの下桁コントロール(この場合右舷にコントロールP.107参照)で船首を潮上に向ければ仕掛けは船と並行に流れますので潮流に合わせやすくなります。(この詳しい解説はP.116をご参照下さい)

CHECK POINT
ボトムフィッシングの場合、船の制御は潮流についていくことですから、風の影響を受けてどんどん風下に流されてしまうと潮流の方向とは別な方向に船は流されてしまいます。ですから大きなスパンカーは不適切で、風の影響が少ない適切な大きさのスパンカーの方が船の制御はしやすいことになります。ただし、セイルが風を受ける前に船首が風下に流されてしまう船は当てはまりません。船首が風に流されにくい船(スパンカーボート)であることが条件です。

近年の問題点:船に合った適切な装備の仕方
船に合った適切なスパンカーを効率よく装備することは誰でも考えることですが、レジャー船の場合、近年その基準が大きくずれてきています。特に異常なくらいセイルの位置を高くしたり、フラットに張れていない大きなセイルを見かけます。原因の多くは船首が風上に向かないので対策を施したためのようですが、却ってマイナスになっています。

キャビンが邪魔して風がセイルに当たらないと勘違いして、下桁を高くしてセイルを上げている船があります。マストが高くなり、セイル面積の中心も上がるため船はトップヘビーになり横揺れが大きくなり、セイルに当たる風も船を傾斜させる方向に働きますので、却って悪い方向に影響してしまいます。(P.107下桁の高さ参照)

 
近年の傾向でマストを最船尾に位置させる船が多くなってきました。しかし船尾に位置させることで、下桁シートの船体側取り付け部との角度がきつくなるため、マストを押す力が増してマストが弓なりにベンドしてセイルがフラットに張れなくなります。船体側取り付け部は喫水近くの低い位置に付けることが有効です。(P107マスト位置に関して参照)

最も重要なこと:セイルは板のようにフラットに張る
スパンカーのセイルは、セイルに当たった風を素早く逃がすことで反発し船尾を動かしますので、板のようにフラットなセイルでなければ効果は発揮しません。ヨットのセイルのように袋状になったり、タルミがあるとその効果は半減します。また、板のように張ったセイルは風上に向いたときの抵抗も最も少なくなります。(P.107セイルの張り方参照)

FMSの対策:セイル形状の見直し
軽くて強いセイルクロス(ヨットのセイル)の特性を考慮して、最も理想的なスパンカーのセイル形状を見直してみました。大航海時代の後ろのマストにあるスパンカーは横風の時に効果を発揮しました。現在プロ用漁船セイルで使われている形状は大航海時代のスパンカーに似た形状で、高く振り上げた上桁は横風を受けると振れてしまうので、角度を下げてセイルを板のように張れるようにしました。(マストも低くなるのでトップヘビーを迎えることができます)

近年の問題点:最船尾にマストを位置させる傾向 
スパンカーは後ろほど良いと言う理論と後部デッキ上でスパンカーマストは邪魔になると言う考え方のため、近年スパンカーのマスト位置は最船尾に追いやられてしまい、これ以上下げられない船尾のブルワークトップに位置する船が多くなってしまいました。したがって私が知る範囲ではワイズギアが販売する巻き取り式やローマストスパンカー以外は、展開収納をトップレールの上に乗って行うことになり、落水の危険性を伴う作業になっています。

FMSの対策:落水防止用スパンカーセイルパックの開発
船尾レールの上に乗ると落水の危険があるのでデッキ上で操作が可能なシステムを開発しました。また、カバーの中にセイルが収納できるので、風によるバタつきや紫外線による劣化を抑えることができます。(黒いロープでファスナーの開け閉めをします)

FMSの対策:スパンカーによる船の操り方の講習会を開催
初めての方はもちろん、経験者の方にもスパンカーを装備した船の操り方(釣り方)の基本を正しく理解していただこうと講習会を開催。模型を使って座学を行った後、船を出して座学で講習した内容を実際に証明しています。皆さんスパンカーの操り方を正しく理解してその効果を十分に活用されているか、また安全に使用されているかというと…。特に多くの方が誤解されているのが、大きいセイルにした方が船は風上に向き安定するだろうと思っていることです。実際には、船と釣りの仕掛けは潮に流され、同時に船は風の影響も受けて流されます。そのためオーバーサイズのスパンカーを取り付けた場合は風に流されやすくなり、風が強くなると全く釣りにならないばかりか危険を伴うことになります。従って講習会ではいつも、船に適合したスパンカーのサイズを選ぶことの重要性を強くお伝えし、釣りの仕掛けに船が付いていけるスパンカーの操り方の指導をするようにしています。

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